2011年前期 第2回 細胞生物学セミナー
日時:6月7日(火)16:30~
場所:総合研究棟6階クリエーションルーム
Exposure of
maize seeds to stationary magnetic fields:
Effects on germination and early growth
Fl´orez, M., Carbonell, V.M.,
Mart´ınez, E. (2007)
Environmental and Experimental Botany 59 : 68–75
トウモロコシ種子の静磁場への曝露による発芽や初期成長における影響
磁場による生体系における影響、特に種子の発芽や植物の成長における影響に関しては、多数の研究報告がある。例えば、研究初期の報告では、磁場によるコムギの芽生えの伸長率増加(Savostin,1930)や種子発芽率増加(Murphy,1942)、酵素活性の増加(Akoyunoglou,1964)などがある。また、近年の研究では、15~155 mTの異なった磁場へのトマト種子の曝露による初期の枝長と枝数の増加(Dayal and Singh,1986)やコムギ種子の磁場曝露による発芽や芽生えの成長、作物収量などの増加(Pietruszewski,1993)、150 mTの磁場へのトウモロコシ種子の曝露による発芽や芽生え生重量、シュートの長さの増加(Aladjadjiyan,2002)などが報告されている。この様に、磁場条件下における成長の増加は多くの研究者によって確認されている。
本研究では、静磁場への曝露によるトウモロコシ種子の発芽や芽生えの初期成長における影響を、定量化することを目的に行なった。発芽実験と成長実験において、20個のトウモロコシ種子への曝露(n=5)に使用した磁場条件は、磁場強度125 mTや250 mT、磁場曝露時間1分間や10分間、20分間、1時間、24時間、そして測定まで持続した曝露時間があり、以上これらの磁場強度と磁場曝露時間をそれぞれ組み合わせた。磁場線量は外径75 mm、内径30 mmの円形磁石によって発生させ、携帯式ガウスメーターによって測定した。
種子の発芽実験の結果、磁場未処理のコントロール値と比較して、発芽までに要した時間が短く、発芽率も高い種子が、いくつかの磁場処理条件で見られた。特に、20分間と24時間、測定まで持続した曝露時間の125 mTへの曝露と、1分間と20分間、24時間、測定まで持続した暴露時間の250 mTへの曝露を行った種子の発芽までに要した平均時間は有意に短かった。また、24時間と測定まで持続した曝露時間の125 mTや250 mTへの曝露を行った種子の発芽率10%までに要した時間において、有意差(p<0.001)が顕著に得られた。これらの結果は、磁場に曝露したトウモロコシ種子の早い発芽を示している。7日齢の芽生えの成長実験の結果、測定まで持続した曝露時間において、磁場未処理のコントロール値と比較して、125 mTと250 mTへ曝露した種子の全長(根長)は有意に増加していた(p<0.001)。10日齢の芽生えの成長実験では、同様の結果に加えて24時間曝露したものにおいても有意な差が見られ、また生重量も有意に増加していた。(p<0.01)。
以上の結果から、磁場処理がトウモロコシ植物の発芽率と芽生えの成長を増加させる可能性が示唆された。この結果は過去の多数の研究報告と一致している。しかしながら、植物や他の生体系への磁場曝露の作用メカニズムは、生化学的な変化や酵素活性の変化を含め、いくつかの理論が提唱されているが、未だ具体的な解明には至っていない。将来、より適当な作用メカニズムが確立されるために、本研究による興味深い現象が注目され、エンジニアや化学者、物理学者、生物学者などによる共同研究にて多くの実験を行うことを望む。
興味を持たれた方は、是非ご参加下さい。進藤裕美